故人の車の名義変更手続き
家族が亡くなったあと、家財の整理と同様に手続きを求められるのが 自動車の名義変更(相続手続き) です。
車は「動産」のひとつであり、不動産と同じく相続財産となります。
故人の車を家族が使い続ける場合も、売却する場合も、廃車にする場合も、必ず 相続による名義変更 をしなければなりません。
なぜなら、車の名義は法律で厳格に管理されており、「故人名義のまま使用する」「名義変更せずに売る」 といった行為は違法となる可能性があるためです。
ここでは、故人の車の名義変更(相続)について、必要書類・手続きの流れ・注意点・代行の可否まで、実務で役立つレベルで具体的に説明します。
1. 故人の車の名義変更は「相続」手続きである
まず大前提として、故人名義の車は すべて相続財産 となります。
- 車検証の所有者名
- 自動車税の納付者名
- 任意保険の契約名義
- 車庫証明の使用者名
これらがすべて故人名義のため、相続人が使用するには 名義変更が必須 です。
2. 名義変更(相続)の方法は「相続人全員の同意」が必要
車は法律上「遺産」のひとつです。
そのため、車を誰が相続するかは相続人全員で話し合う必要があります。
話し合いの結果は 遺産分割協議書 にまとめます。
形式は自由ですが、次の内容が必須です。
- 故人の氏名
- 車の情報(車名、車台番号、型式)
- 誰が車を相続するか
- 相続人全員の署名と実印
- 相続人全員の印鑑証明書
これがなければ陸運局での名義変更ができません。
3. 故人の車の名義変更で必要な書類(非常に重要)
名義変更は「相続」という特殊な手続きのため、書類が多くなります。
以下に 必要書類を全てまとめて解説 します。
A. 相続関係を証明する書類(必須)
① 故人の出生から死亡までの戸籍謄本(全部必要)
これにより、相続人が誰かを確定します。
② 相続人全員の戸籍謄本
全員の身分関係が必要になります。
③ 相続人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内)
遺産分割協議書に押した実印が本人のものであることを証明します。
④ 遺産分割協議書
形式自由ですが、以下が必要です。
- 「相続人全員が車(車台番号:XXXX)を〇〇が相続することに同意する」
- 相続人全員の署名・実印
- 印鑑証明書の添付
B. 車両関係の書類
① 車検証(原本)
紛失している場合は「車検証再発行」が必要です。
② 車庫証明(新使用者の住所で取得)
同じ住所内での相続なら不要なケースもあります。
都道府県公安委員会によってルールが異なります。
③ 相続人の本人確認書類
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
が一般的です。
C. 陸運局で必要な書類(現地で入手可)
- ① 申請書(第1号様式)
- ② 手数料納付書
- ③ 自動車税・環境性能割申告書
これらは陸運局(運輸支局)で無料でもらえます。
4. 名義変更の実際の流れ(ステップごとに具体的解説)
ここからは、実際に名義変更を行うときの流れを 順番に・分かりやすく・詳しく 説明します。
STEP1:相続人を確定し、戸籍を揃える
まずは故人の戸籍を「出生から死亡まで」すべて集めます。
理由:
- 相続人が誰かわからないと手続きできない
- 認知した子など戸籍にしか記録されない情報がある
戸籍収集には時間がかかるため、早めに取りかかります。
STEP2:相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成
車は法定相続分では分割できないため、
誰か一人が相続する のが一般的です。
代表者を決め、遺産分割協議書を作成します。
STEP3:車庫証明が必要な場合は取得
名義変更後の使用者の住所で車を保管する場合、
車庫証明を新たに取る必要があります。
必要書類:
- 駐車場使用承諾書
- 保管場所の位置図
- 配置図
- 使用者の住所確認書類
※軽自動車は車庫証明が不要な地域もあります。
STEP4:陸運局(運輸支局)に行き、名義変更手続きを行う
名義変更の窓口は、各都道府県の 運輸支局(陸運局) にあります。
手続き内容:
① 相続を原因とする所有者変更の申請
提出書類:
- 戸籍一式
- 遺産分割協議書
- 車検証
- 車庫証明
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 申請書(陸運局で入手)
② 税関係の申告(自動車税・環境性能割)
窓口で申告書を作成します。
STEP5:新しい車検証の交付
提出が完了すると、
相続人名義の車検証が発行されます。
これで名義変更は完了です。
STEP6:ナンバープレートの変更(必要な場合のみ)
以下の場合、ナンバー変更が必要です。
- 住所が変わる
- 管轄運輸支局が変わる
- 他県に引っ越す
同一自治体内であればナンバー変更が不要です。
STEP7:自動車保険(任意保険)の名義変更
これは非常に重要です。
名義変更しないまま乗ると、事故時に保険金がおりない場合があります。
必要書類:
- 新車検証
- 相続関係書類
保険会社によっては等級の引き継ぎが受けられます。
5. 死後に名義変更をしないのは違法になる?
はい、非常に危険です。
故人名義の車に乗る行為は、
- 自賠責保険の記載事項違反
- 任意保険不適用(事故時に保険金が出ない)
- 道路運送車両法違反
に該当する可能性があります。
とくに事故を起こした場合、
- 相手への損害賠償は全額自己負担
- 刑事責任
- 民事責任
- 行政処分
が発生するため、絶対に避けなければなりません。
6. 相続による名義変更は「売却」「廃車」の前提となる
故人の車を
- 売却する
- 廃車にする
- 下取りに出す
いずれの場合も、必ず 相続名義変更が必要 です。
よくある誤解:
「売却するなら名義変更は不要ですか?」
→ 必要です。
故人名義のまま売却すると、所有権の移転ができません。
7. 名義変更にかかる費用
費用は大きくかかりません。
- 車庫証明 2,000〜3,000円
- 名義変更手数料 500円前後
- ナンバー変更(必要な場合) 1,500〜2,000円
- 印鑑証明書代 300円×人数分
- 戸籍の取得費用 1通450円程度
※代行すると1〜3万円が相場です。
8. 名義変更にかかる時間
書類が揃えば、当日中に完了 します。
ただし、
- 戸籍の収集:1〜3週間
- 遺産分割協議書作成:数日〜数週間
- 車庫証明取得:3〜7日
という期間が必要です。
9. 名義変更を自分でできるか?業者に依頼すべきか?
自分でできる人
- 相続関係を理解できる
- 書類を集める時間がある
- 陸運局が近い
業者に依頼すべき人
- 戸籍収集が面倒
- 相続人が多い
- 相続トラブルがある
- 陸運局が遠い
- 平日に手続きをするのが難しい
行政書士や廃車業者が代行可能です。
10. まとめ:故人の車の名義変更は「相続手続きそのもの」
最後に、大切なポイントをまとめます。
車は相続財産であり、名義変更は必須
名義変更には、相続人全員の同意が必要
必要書類は多いが、順番に揃えれば難しくない
名義変更しないで車に乗るのは極めて危険
廃車、売却、継続使用すべてに名義変更が必要
書類が揃えば、陸運局で1日で完了
故人の車は、そのまま放置すると、
- 自動車税がかかり続ける
- 保険が使えない
- 名義変更ができなくなる
- 廃車や売却ができない
など、多くの問題が発生します。
正しく手続きを行い、安全に相続人名義へ変更することが最も重要です。





