故人のデジタルアカウントを調べる
故人のデジタルアカウントを調べる方法とパスワード入手の考え方
現代の生活では、ほとんどの人が複数のデジタルアカウントを所有しています。ネット銀行やクレジットカードのオンライン管理、メール、SNS、クラウドストレージ、オンラインショッピング、そしてサブスクリプションなど、どれも生活の一部となっています。
そのため、所有者が亡くなった後にこれらのアカウントが放置されると、家族が重要な情報を得られなかったり、解約できず料金が引き落とされ続けたりといった問題が生じます。
こうした事態を防ぐためには、故人がどのようなデジタルアカウントを持っていたのかを丁寧に調べることが大切です。
故人のデジタルアカウントを見つけるには
紙の記録や契約書類を確認する
まず、故人の身の回りに残された書類を調べます。通帳、クレジットカードの明細、請求書などには、どのサービスを利用していたのかが記載されていることがあります。特にクレジットカードの引き落とし履歴には、Amazon、楽天、Netflix、Apple、Googleなどのサービス名が残っており、そこから関連するアカウントを特定できます。
また、携帯電話会社やインターネットプロバイダとの契約書からも、使用していたメールアドレスやクラウドサービスの手がかりを得られる場合があります。
パソコンやスマートフォンの中を確認する
故人が使っていたパソコンやスマートフォンは、デジタルアカウント調査の重要な手掛かりです。電源が入る場合は、設定画面やアプリの一覧から登録されているアカウントを確認できます。スマートフォンの設定では、Apple IDやGoogleアカウント、LINE、Facebook、Instagramなどの情報が確認できることがあります。
パソコンの場合は、ブラウザの「保存されたパスワード」や「閲覧履歴」「お気に入り」から、利用していたサービスを把握できます。ブラウザに自動ログインが設定されているケースも多く、アカウントを見つけやすいでしょう。
メールの受信履歴を確認する
故人のメールアカウントにアクセスできる場合は、そこからも多くの情報を得られます。新規登録完了通知やパスワード再設定の案内メール、利用明細などから、アカウントの存在を特定できます。GmailやYahoo!メールなど複数のメールアドレスを使い分けていた人も多いため、すべて確認しておくことが重要です。
家族や知人への聞き取り
家族や友人への聞き取りも有効です。故人が日常的に利用していたSNSや趣味のサイト、ネットショップなどを知っている人がいれば、そこから手がかりが得られます。会社員や自営業者であれば、勤務先がビジネス関連のアカウントを管理している場合もあります。
インターネット機器や家電の設定を確認する
自宅のWi-Fiルーターやスマート家電の設定画面からも情報を得られることがあります。接続履歴や登録アカウント名を調べることで、クラウドサービスの存在が分かる場合があります。
パスワードの入手と取り扱いについて
故人の残した記録を探す
故人が残したノートやメモ、エンディングノート、パスワード管理表などにログイン情報が記されている場合があります。また、パスワード管理アプリ(1Password、LastPassなど)を使っていた場合は、マスターパスワードがあれば全アカウントの情報を確認できます。
デバイスに保存されたパスワードを確認する
パソコンやスマートフォンの電源が入る場合、ブラウザやOSに保存されているパスワードを確認することが可能です。Google ChromeやMicrosoft Edge、Safariなどでは、OSのログインパスワードを入力することで保存済みのパスワードを閲覧できます。
ただし、この作業は正当な相続人または遺言執行者である場合に限り、法的に許される範囲で行うことが大切です。
無断アクセスは法律で禁止されている
パスワードが不明な場合でも、第三者が勝手にログインを試みたり、解析ソフトを使って解除することは不正アクセス禁止法に違反します。
必ずサービス提供会社に連絡し、正式な手続きを通じて対応を依頼してください。
サービス会社への正式な申請
多くの会社では、死亡が確認できれば遺族や遺言執行者に対して、アカウントの削除やデータ提供、相続に関する対応を行っています。
その際には次のような書類を提出するのが一般的です。
- 死亡診断書または死亡届の写し
- 戸籍謄本・除籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 相続人の身分証明書・印鑑証明書
- 遺産分割協議書または遺言書
- 家庭裁判所の「相続財産管理人選任書」(必要な場合)
これらを整えて各社の公式窓口やヘルプセンターへ申請すると、正式な手続きとして処理してもらえます。
法的手続きや専門家の活用
暗号資産や高額なオンライン資産が関係している場合、サービス提供会社が任意で応じないこともあります。その場合は、弁護士を通じて家庭裁判所の手続きを利用することができます。裁判所の命令(開示命令)を得てアクセス権を取得する方法が、最も安全で確実です。
また、スマートフォンやパソコンのロック解除ができない場合は、デジタルフォレンジック業者に依頼してデータを復旧する方法もあります。法的な証跡を保ちながら作業を行うため、後々のトラブル防止にもつながります。
各サービスごとの対応例
Googleでは「非アクティブアカウントマネージャー」を設定しておくと、一定期間ログインがない場合に指定した人へデータを引き渡す仕組みがあります。
Appleは「デジタルレガシー機能」により、死亡後に指定した家族がアクセスできるように設定可能です。
FacebookやInstagramでは「追悼アカウント」への切り替えや削除手続きを行うことができます。
ネット銀行や証券会社は、相続書類を提出することで残高照会や相続手続きに進むことができます。
手続きの記録を残すことの重要性
どのアカウントをいつ確認したか、どんな申請を行ったかを必ず記録に残しておくことが大切です。手続きの過程をメモやスクリーンショットで保存しておくと、後から相続人同士で確認しやすくなり、トラブルを防ぐことができます。
家族間で共有フォルダを作り、調査内容を整理しておくのも有効です。
故人のデジタルアカウントを調べる意義
故人のデジタルアカウントには、金融資産だけでなく、思い出の写真やメール、仕事の資料など、かけがえのない情報が含まれています。これらを適切に整理・管理することは、現代の「デジタル遺品整理」の一環でもあります。
相続人が安心して対応できるようにするためには、故人のアカウントを丁寧に調べ、法的に正しい方法でパスワードを入手し、確実に処理を進めることが重要です。
必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
まとめ
デジタルアカウントは現代における新しい「財産」であり、放置すれば不正利用や課金トラブルの原因になります。
故人のアカウントを調べる際は、
- 書類やデバイス、メールを丁寧に確認する
- パスワードの取得は正規の手続きを通じて行う
- 各社のサポートや法律の枠組みを活用する
ことが基本です。
デジタル遺品を正しく整理し、必要な情報を家族で共有することが、これからの時代の「相続準備」といえるでしょう。

