相続した車にローンが残っている
相続した車にローンが残っている場合の対応方法
身内が亡くなり相続が発生したとき、遺品として車を受け継ぐケースは多くあります。しかし、その車にローンが残っている場合、相続人はどのように対応すればよいのでしょうか。車と相続、そしてローンが残っている状況は複雑に絡み合い、適切な手続きをしなければ思わぬトラブルに発展します。ここでは、車を相続したときにローンが残っている場合の確認事項、必要な手続き、選択肢、そして放置した場合のリスクまで詳しく解説します。
まず確認すべきこと
車を相続する際にローンが残っているかどうかを最初に確認することが重要です。契約書や銀行口座の引き落とし履歴からローン会社を特定し、残債額を把握しましょう。
また、車検証の所有者欄を確認すると、ローン会社や販売店が所有者となっている場合があります。これは「所有権留保」と呼ばれ、ローンが残っている間は名義変更や売却ができません。さらに、残っているローンの額と車の査定額を比較することも大切です。車の価値よりローンが多い場合、相続人に大きな負担がかかることになります。
車を相続したときの選択肢
車を相続し、ローンが残っている場合に考えられる選択肢は主に四つです。
- ローンを引き継いで車を使う
車を生活に必要とする場合、相続人がローンを引き継ぎ、残りの支払いを続ける方法があります。金融機関と再契約を結ぶ必要がある場合も多く、収入や支払能力を確認されるケースもあります。 - 車を売却してローンを清算する
相続した車を使わないのであれば、売却して残債を返済に充てることができます。ローンが残っている場合でも、買取業者がローン会社と連携して残債処理を代行するサービスがあります。売却額がローンを上回れば相続人に差額が戻り、下回れば不足分を相続人が支払います。 - 相続放棄をする
車に限らず、相続全体で負債が多い場合は家庭裁判所で相続放棄をすることが可能です。相続放棄をすればローンが残っている車も含めて財産を一切受け取らず、負債の返済義務もなくなります。ただし相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内に行う必要があります。 - 限定承認を選択する
限定承認は、相続によって得られるプラスの財産の範囲でのみローンなどの負債を返済する方法です。たとえば車の査定額が150万円、ローンが200万円残っている場合、150万円の範囲で返済し、残りの50万円は支払う必要がなくなります。相続人全員の合意が必要ですが、負担を軽減できる方法です。
必要な手続きと書類
車を相続したときにローンが残っている場合は、まずローン会社に連絡を入れます。その際に必要になる書類は、故人の除籍謄本や死亡を証明する書類、相続人の戸籍謄本や印鑑証明書などです。
ローンを完済した後は、車の名義を相続人に変更する必要があります。名義変更に必要な書類は以下の通りです。
- 車検証
- 自動車検査証記録事項証明書
- 故人の除籍謄本や住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
- 自動車税申告書
これらを運輸支局に提出することで、正式に車を相続することができます。
手続きを放置した場合のリスク
車を相続し、ローンが残っているにもかかわらず手続きをせずに放置すると、多くのリスクが生じます。ローン会社から督促や支払い請求が届き、延滞金が発生する恐れがあります。また、ローン会社が所有権を持っている場合は、車が引き上げられることもあります。
さらに、相続財産全体の分割協議が進まなくなり、相続人同士のトラブルにつながる可能性もあります。車のローン問題を先送りにすると、親族間の関係悪化を招く原因になることも少なくありません。
専門家に相談する重要性
車を相続したときにローンが残っている場合、司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談することで解決がスムーズになります。司法書士は名義変更や遺産分割協議書の作成を、弁護士は相続放棄や限定承認の申立てをサポートしてくれます。税理士は相続税や譲渡所得税に関するアドバイスをしてくれます。
相続放棄と限定承認の違い
相続放棄は、車を含めたすべての財産とローンを放棄する制度です。これに対して限定承認は、相続した財産の範囲でのみローンが残っている負債を清算し、それを超える分は負担しない制度です。車を相続したいがローンが重いと感じる場合、限定承認を検討する価値があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続した車にローンが残っている場合、すぐに乗ることはできますか?
A. ローンが残っている車は所有権がローン会社や販売店にあるため、名義変更をしない限り相続人が自由に使うことはできません。まずはローン会社に連絡し、残債処理をどうするかを決める必要があります。
Q2. 車を相続したいのですが、ローンが残っているときはどうすればいいですか?
A. 相続人がローンを引き継いで支払う方法と、車を売却してローンを清算する方法があります。生活に車が必要ならローンを継続し、使わないなら売却を検討しましょう。
Q3. 相続した車を売却してローンを返済できますか?
A. はい、可能です。ただしローンが残っている場合は所有権留保があるため、売却する際にはローン完済または「残債処理付きの買取サービス」を利用する必要があります。買取業者がローン会社と直接やり取りをして清算してくれるケースもあります。
Q4. 相続した車にローンが残っている場合、相続放棄すれば支払わなくてよいですか?
A. 相続放棄をすれば、車を含めてすべての遺産を受け取らない代わりに、ローンをはじめとする負債の返済義務もなくなります。ただし相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申立てる必要があります。
Q5. 相続人が複数いる場合、車のローンはどう扱われますか?
A. 車のローンが残っている場合、相続人全員が債務を法定相続分に応じて引き継ぎます。実際には誰が車を使うかを遺産分割協議で決め、その人がローンを引き継ぐ形にするのが一般的です。
Q6. 車の査定額よりローンが残っている額のほうが多いときはどうすればよいですか?
A. この場合は「限定承認」を検討できます。限定承認をすると、車を売却して得た金額の範囲でローンを返済し、それを超える部分については相続人が支払う必要がなくなります。
Q7. 車と相続とローンの問題は専門家に相談した方がよいですか?
A. はい。相続に車やローンが絡むと、名義変更、相続放棄、限定承認など多くの手続きが必要になります。司法書士や弁護士に相談することでトラブルを防ぎ、スムーズに解決できます。
まとめ
相続した車にローンが残っている場合、契約内容と残債を確認し、相続人がローンを引き継ぐのか、車を売却するのか、相続放棄や限定承認を選ぶのかを判断する必要があります。手続きを怠ると督促や差し押さえ、相続人同士のトラブルにつながります。必要書類を整えて正しく手続きを進めることが大切です。
車、相続、そしてローンが残っているという三つの要素が絡む場面は非常に多く見られます。早めに方向性を決め、場合によっては専門家に相談することが、相続トラブルを回避する最善の方法です。






