故人のローン・借金・連帯保証を調べる
相続手続きで最も重要で、かつ見落とされやすいのが、故人のローン・借金・連帯保証の調査です。相続は「包括承継」という仕組みにより、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐことになります。そのため、故人の借金や保証債務を見逃したまま相続を進めると、後から突然高額の請求が届くという深刻な事態につながります。
特に連帯保証は、契約書が残っていないことも多く、家族が全く気づかないまま相続が始まるケースが多発しています。このようなトラブルを防ぐためには、相続前後に丁寧な調査を行うことが不可欠です。
ここでは、相続人が知っておくべき故人の借金・ローン・連帯保証を調べる方法について、具体的かつ実務的な観点から詳しく説明します。
郵便物から調べる方法
故人の借金やローンを調べるうえで、最も基本的で効果的な手段が郵便物の確認です。
故人宛の次のような郵便物は、負債の存在を示す重要な手がかりになります。
- 銀行や消費者金融からの督促状
- クレジットカード会社からの請求書
- ローン残高のお知らせ
- 住宅ローン・自動車ローンの案内
- 信販会社からの契約更新書類
- 保証会社からの通知
特に督促状は、相続人に代位返済を求める前兆となることが多く、見逃せない重要書類です。
郵便物は日々届くため、相続が発生したら一定期間は故人の住所に届く郵便物を必ず確認しましょう。
通帳・銀行口座を確認する方法
故人の通帳は、借金の調査において非常に重要な資料です。
通帳の入出金の履歴から、次のような借入先が判明することがあります。
- 消費者金融からの自動引き落とし
- ローン返済の引き落とし
- クレジットカードのリボ払い
- 不自然な多額の振込履歴
- 保証料の支払い
特に、毎月一定金額が同じ相手に引き落とされている場合は、ローン契約や借金の返済である可能性が高いです。
また、故人が利用していた銀行の支店に問い合わせれば、預金口座の有無やローン契約の存在を確認できる場合があります。銀行によって手続きは異なりますが、相続人が戸籍謄本を提出することで情報を開示してもらえることがあります。
クレジットカード・キャッシュカードを調べる方法
クレジットカードの裏面や利用明細は、故人の支払い状況や借入状況を知るうえで非常に有用です。近年はリボ払いやキャッシング枠を利用しているケースが多く、カード単体で負債を抱えている可能性もあります。
さらに、キャッシュカードやデビットカードの利用明細からも借金の形跡が見つかることがあります。
カード会社に問い合わせることで、カードの契約状況や残高を確認できる場合もあります。
故人の遺品の中から契約書・書類を探す方法
遺品整理の中で、次のような書類が見つかることがあります。
- ローン契約書
- 借入契約書
- 連帯保証契約書
- 金銭消費貸借契約書
- リース契約書
- 分割払い契約書
これらは借金や保証契約の存在を示す直接的な証拠となります。
特に連帯保証契約は家族に知られないよう保管されていることもあり、重要書類フォルダや金庫の中を丁寧に確認することが必要です。
信用情報機関で調べる方法
故人の借金をより正確に把握するために、信用情報機関に情報開示請求を行う方法があります。
日本には以下の三つの信用情報機関があります。
- CIC(クレジット契約情報)
- JICC(消費者金融系の信用情報)
- 全国銀行個人信用情報センター(銀行ローン情報)
相続人は、故人の死亡を証明する書類と相続関係を証明する書類を提出することで、故人の信用情報を開示してもらえる場合があります。
ここからは、以下の情報がわかります。
- クレジットカード利用履歴
- リボ払い・キャッシング情報
- 消費者金融の借入状況
- 銀行ローンの残高
- 支払い延滞の有無
ただし、信用情報機関には「連帯保証債務」が登録されていないことが多く、保証契約の調査には限界もあります。
税金の滞納通知を調べる
故人が税金を滞納していた場合、次のような通知が遺品の中や郵便物に残っていることがあります。
- 固定資産税の納税通知書
- 住民税の督促状
- 国民健康保険料の未納通知
- 自動車税の督促
税金の滞納は、借金と違って差押えの可能性が高いため、早期の確認が重要です。
取引先・勤務先・知人への聞き取り
故人が個人事業主や会社役員であった場合、事業上の保証契約や借入がある可能性があります。
次のような聞き取りも有効です。
- 仕事関係者への確認
- 取引先への聞き取り
- 親しい友人・知人への相談
- 家族に話していなかった借入の可能性の確認
特に連帯保証は、第三者との人間関係の中で行われることが多いため、周囲への聞き取り調査が非常に重要です。
連帯保証債務を調べる難しさ
借金と異なり、連帯保証債務は非常に調べにくいという特徴があります。
保証契約書が見つからない限り、銀行や保証会社は相続人に自ら情報を開示してくれません。
そのため、専門家である司法書士や弁護士と連携して調査を進める必要があるケースもあります。
専門家に調査を依頼する方法
次のような状況では、専門家に調査を依頼するのが有効です。
- 郵便物がほとんど残っていない
- 借金の手がかりが見つからない
- 連帯保証債務の有無を確認したい
- 相続放棄を検討しているが負債状況がつかめない
司法書士・弁護士は、相続人の代理人として関係各所に照会を行い、借金や保証契約の有無を調べていきます。
まとめ
故人のローン・借金・連帯保証は、相続人が最も気をつけるべき相続リスクです。
負債は遺産とともに相続されるため、調査を怠ると後から突然の請求が届くことになり、相続人に大きな負担がかかります。
調査方法としては、郵便物の確認、通帳のチェック、クレジットカードの調査、契約書類の探索、信用情報機関の開示、周囲への聞き取りなどがあります。
しかし、とりわけ連帯保証債務は隠れている場合が多いため、慎重かつ丁寧な確認が必要です。
相続前後に正しい手順で調査を行うことで、負債の見落としを防ぎ、安全に相続手続きを進めることができます。




