遺言書があるか確認する具体的な方法

遺言書があるか確認する

遺品整理を行う際、故人の遺品の中から「遺言書」が見つかることがあります。
遺言書は、故人が自らの財産や思いを遺族へ伝えるための大切な法的文書です。
しかし、すぐに目に入る場所に保管されているとは限らず、発見が遅れたり、存在そのものを知らずに相続手続きを進めてしまうケースも少なくありません。
遺言書があるかどうかによって、遺産の分け方や相続人の権利関係が大きく変わるため、早期に正確な確認を行うことが非常に重要です。

ここでは、遺言書が存在するかを確認するための具体的な方法を、遺品整理・法務・相続実務の観点から詳しく解説します。


遺言書の種類を理解する

まず、遺言書には大きく分けて3つの形式があります。
種類によって確認すべき場所や手順が異なるため、まずはそれぞれの特徴を理解しておきましょう。

自筆証書遺言

故人がすべて自分で手書きした遺言書。
最も一般的で、費用がかからない一方、形式不備があると無効になるリスクがあります。
封筒に「遺言書在中」と書かれていたり、押し入れ・机の引き出し・金庫などに保管されていることが多いです。
また、2020年からは法務局での「自筆証書遺言の保管制度」も始まっており、後述の方法で確認できます。

公正証書遺言

公証人が作成し、公証役場に原本を保管している遺言書です。
法的効力が最も強く、検認(家庭裁判所での確認手続き)が不要です。
相続人が知らなくても、公証役場のデータベースから照会すれば存在を確認できます。

秘密証書遺言

内容を秘密にしたまま公証役場に提出・保管されている遺言書です。
本人が署名・押印し、封印して公証人に提出しますが、現在ではあまり利用されていません。
こちらも、公証役場での照会で確認可能です。


遺言書が見つかる可能性のある場所

自筆証書遺言の場合、故人の生活環境や性格によって保管場所はさまざまです。
遺品整理の現場でよく発見される場所を以下に挙げます。

  • 机や書斎の引き出し
  • タンスやクローゼットの封筒・ファイル類
  • 金庫や貴重品ボックス
  • 仏壇や神棚の引き出し
  • 遺影や写真アルバムの間
  • 通帳・保険証書と一緒の封筒
  • 銀行貸金庫(預金と一緒に保管されている場合あり)
  • 信頼していた知人・顧問税理士・行政書士が預かっているケースも

多くの場合、「大切なもの」「相続関係書類」「もしもの時に開けてください」と書かれた封筒に入っていることがあります。
ただし、封を切る際は注意が必要です。自筆証書遺言の場合、勝手に開封してはいけません(後述)。


法務局で確認する方法(自筆証書遺言保管制度)

2020年(令和2年)7月から始まった「法務局における自筆証書遺言の保管制度」を利用している場合、
遺言書は故人が生前に法務局に正式保管している可能性があります。

この制度を利用しているかどうかは、次の手順で確認できます。

確認方法

  1. 法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付を請求する
    • 相続人・受遺者・代理人などが請求可能
    • 本人の死亡証明書(戸籍謄本)と申請書が必要
  2. 請求先の法務局
    • 故人が生前に遺言を保管申請した法務局、または全国どの法務局でも照会可能
  3. 必要書類
    • 被相続人(故人)の戸籍謄本(死亡記載入り)
    • 請求者の身分証明書
    • 手数料(390円程度)
  4. 結果の通知
    • 遺言書が保管されていれば、「保管証明書」が発行され、遺言書の写しを請求できます。
    • 登録がない場合は「該当なし」の回答が得られます。

この制度を利用していれば、紛失・改ざんの心配もなく、確実に確認できるため、まず法務局への照会を行うのが現代では最も確実な方法です。


公証役場で確認する方法(公正証書遺言・秘密証書遺言)

公正証書遺言または秘密証書遺言の場合は、全国の公証役場ネットワークで保管情報が一元管理されています。

確認手順

  1. 「公証役場遺言検索システム」での照会
    • 被相続人(故人)の本籍地・氏名・生年月日をもとに検索
    • 全国のどの公証役場でも照会可能
  2. 請求できる人
    • 相続人・受遺者・遺言執行者・代理人(弁護士など)
  3. 必要書類
    • 被相続人の死亡を証明する戸籍謄本
    • 請求人の本人確認書類
    • 手数料(数百円程度)
  4. 結果の通知
    • 登録があれば、その公証役場から「遺言の存在通知」や「写しの交付」が行われます。
    • 登録がない場合はその旨の回答となります。

この方法で確認できるのは、「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」のみですが、実際に法的効力が確実な遺言書の多くは公正証書形式で作られています。
したがって、まずは公証役場への照会が重要な第一歩です。


家庭裁判所への「検認」手続き(自筆証書遺言の場合)

自筆証書遺言を発見した場合、その封筒を勝手に開けてはいけません。
開封するには、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。

検認とは

検認とは、遺言書の形状・筆跡・封印などを確認し、改ざん防止・保全を目的とした裁判所の手続きです。
この手続きが完了すれば、正式に遺言の内容を確認し、法的効力を持たせることができます。

手続きの流れ

  1. 遺言書を家庭裁判所に提出
  2. 相続人全員に通知
  3. 検認期日に裁判官が開封・確認
  4. 検認調書が作成される

検認後に初めて、遺言の内容に基づく遺産分割や手続きが進められます。
もし相続人が勝手に開封した場合、過料(科料)や刑事罰の対象になることもあるため注意が必要です。


弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの専門家に確認する

故人が生前、相続対策や財産管理を専門家に依頼していた場合、
顧問税理士・弁護士・行政書士・司法書士が遺言書の写しや保管場所を把握していることがあります。

特に次のようなケースでは、専門家への照会が有効です。

  • 故人が生前に相続相談をしていた
  • 財産管理契約・任意後見契約を結んでいた
  • 遺言執行者として専門家が指定されている

専門家は守秘義務を負っていますが、故人の死亡が確認された後は、相続人からの正式な依頼・戸籍証明書の提示によって情報開示されることがあります。


銀行・保険会社・証券会社などに確認する

一部の金融機関では、取引顧客が生前に遺言書や遺言信託を預けていることがあります。
たとえば、銀行の「遺言信託サービス」や「相続支援プラン」を利用していた場合、銀行に遺言書の保管記録が残っています。

確認手順

  • 故人の口座がある銀行の窓口で照会
  • 死亡届・戸籍謄本・本人確認書類を提出
  • 遺言信託がある場合は、指定された遺言執行者(多くは銀行自身)から連絡が入る

このケースでは、遺言書が公正証書として作成されていることが多く、法的効力も高いです。


親族・知人・友人への聞き取り

遺言書は、故人が誰かに預けていたり、作成の事実を話していた場合もあります。
次のような人々に確認してみましょう。

  • 故人の親しい友人・知人
  • 親族(兄弟姉妹、甥姪など)
  • 医師・介護士など、生前に信頼していた関係者
  • 行政書士・弁護士・公証人など専門家

「遺言を書いた」と話していたことを覚えている人がいれば、遺言の有無を早期に特定できる可能性があります。


SNS・パソコン・デジタルデータの中も確認

近年では、紙ではなくデジタル形式で遺言書を作成・保存しているケースも増えています。
例えば、パソコンやスマートフォン内のフォルダ、クラウドストレージ(Googleドライブ、iCloudなど)、メール下書き、メモアプリなどにデータが残されている場合があります。

ただし、電子データだけでは法的に有効な「遺言書」とは認められません。
しかし、正式な遺言書作成の意志を示す「遺言メモ」として、遺族の意向を判断する補助資料になることもあります。


遺言書が見つかった後の注意点

遺言書を発見した場合は、焦って開封したり処分したりせず、慎重に対応することが大切です。

  • 封がされている場合は開けない(家庭裁判所へ)
  • 汚れや破損を避けて保管
  • 発見日時・場所を記録しておく
  • 相続人全員に知らせる

もし遺言書の有無や真偽に疑いがある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談して法的確認を行いましょう。


まとめ

遺言書は、故人の「最期の意思」を示す極めて重要な書類です。
しかし、その存在を確認しないまま相続手続きを進めてしまうと、後から発見された際に相続内容が無効になったり、相続人同士でトラブルになることもあります。

遺言書の確認方法は多岐にわたりますが、主なポイントは次のとおりです。

  1. 自筆証書遺言 → 家庭や金庫、法務局保管制度を確認
  2. 公正証書遺言 → 公証役場で照会
  3. 秘密証書遺言 → 公証役場で照会
  4. 銀行・専門家・知人への聞き取りも有効
  5. 発見したら勝手に開封せず、家庭裁判所で検認手続き

遺言書は「発見のタイミング」で相続全体の流れが変わります。
正しい手順で確認を行うことで、故人の意思を尊重し、円満な相続へとつなげることができます。

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