遺品整理で出てきた骨董品や古美術品、絵画などの取り扱いについて
遺品整理を行うと、生活用品や衣類だけでなく、思いがけず「骨董品」や「古美術品」「絵画」「掛け軸」などの価値ある品が見つかることがあります。こうした品々は一見すると古びた道具に見えることもありますが、実は高い価値を持つこともあり、取り扱いを誤ると大きな損失につながります。
ここでは、遺品整理の現場でよく見つかる骨董品や美術品の種類、それらを正しく取り扱うためのポイント、査定や売却の方法、供養・保存の仕方などを詳しく解説します。
骨董品・古美術品とは何か
「骨董品」とは、一般的に100年以上前に作られた美術的・歴史的価値を持つ品を指します。
これには、陶磁器・漆器・茶道具・刀剣・書画・掛け軸・仏具・古銭などが含まれます。
一方で「古美術品」とは、年代を問わず芸術的価値・美的価値・文化的価値を持つ美術品全般を意味し、現代作家の作品や書道作品、絵画なども含まれます。
遺品整理で見つかるこれらの品々は、故人の趣味や収集癖、あるいは代々受け継がれてきた家系の財産であることも多く、慎重な扱いが必要です。
古い茶碗一つ、掛け軸一幅にも、長い年月と人の想いが込められています。
遺品整理でよく出てくる骨董品・美術品の種類
遺品整理の現場では、以下のような品がよく見つかります。
陶磁器・焼き物
有田焼、九谷焼、伊万里焼、備前焼、萩焼など、各地の伝統的な焼き物。
特に古伊万里や初期九谷は高額査定になることがあります。
また、作家もの(人間国宝や有名陶芸家の作品)は箱書きや共箱が残っていると価値が上がります。
掛け軸・書画
仏画、山水画、花鳥画、書道作品など。
署名(落款)があるものは作者特定が可能で、査定額に大きく影響します。
ただし、保存状態(シミ・虫食い・折れ・カビ)によって価値が大きく変わるため、無理に開かず専門家に依頼するのが安全です。
絵画
洋画、日本画、水墨画、版画など。
特に昭和期以降の日本人画家(平山郁夫、東山魁夷、横山大観、草間彌生など)の作品は国内外で人気が高く、数十万円~数百万円の価値がある場合も。
サインや鑑定書の有無が重要な判断材料になります。
茶道具
茶碗、茶杓、棗(なつめ)、茶入、風炉、掛軸など。
茶の湯に関する道具は、流派(裏千家・表千家)や作者、箱書きの内容によって価値が大きく変わります。
仏像・仏具
木彫仏、銅仏、掛け仏、数珠、仏壇内の仏具なども多く見られます。
信仰の対象であるため、供養を経てから査定・売却するのが望ましいです。
刀剣・甲冑・武具
刀や脇差、鍔、甲冑なども古美術品として扱われます。登録証が付いているものは合法的な骨董刀であり、価値があります。登録証がない場合は警察への届け出が必要です。
古銭・記念硬貨
古い紙幣や金貨・銀貨、寛永通宝など。
また、戦前の貨幣や外国金貨も市場で高い人気があります。
アンティーク家具・時計
明治・大正時代の洋家具や振り子時計、柱時計、オルゴールなども人気です。
メーカーの刻印や当時の輸入品である場合はさらに価値が高まります。
骨董品・美術品の取り扱い方の基本
まずは無理に触らない
古い掛け軸や絵画、陶磁器は非常に繊細です。
ほこりを払おうと布でこすると、表面の絵具や釉薬を傷つけてしまうこともあります。
まずは状態をそのまま保ち、移動や清掃は最小限に留めましょう。
湿気・直射日光を避けて保管
絵画や掛け軸は湿度変化に弱く、湿気によってシミやカビが発生します。
保管は風通しの良い場所で、直射日光を避け、湿度50%前後を保つことが理想です。
鑑定・査定は専門家へ依頼
見た目では価値の判別が難しいため、専門の鑑定士・古美術商・遺品査定士に依頼します。
特に「遺品整理業者」と「古美術商」が連携している会社であれば、仕分けと査定を一括で依頼できるため安心です。
貴重品として慎重に扱う
骨董品や絵画の中には、数十万円から数百万円の価値を持つものもあります。
誤って「不用品」として廃棄してしまうと取り返しがつきません。
判断に迷った場合は、すぐに売らずに保留し、専門業者に相談するのが得策です。
鑑定・査定・売却の流れ
一次選別
まずは遺品整理中に「古そう」「価値がありそう」と感じた品を一箇所に集めます。
茶碗、掛け軸、古い箱、木箱に入った陶器などが目印です。箱書きや証書、作者名のあるものは特に重要です。
専門家による鑑定
専門の鑑定士や古美術商に出張鑑定を依頼します。
現物を確認し、作家名・時代・保存状態・市場価値を総合的に判断してもらいます。
鑑定書が発行される場合もあり、後の売却や保険にも役立ちます。
売却・譲渡・保管の選択
鑑定の結果を踏まえて、次のいずれかを選択します。
- 家族で形見として残す
- 専門店・オークション・美術商に売却する
- 博物館・寺社・地域施設に寄贈する
- 供養・お焚き上げを依頼する
市場価値が高い品は美術商・オークションでの売却が有利ですが、思い出を重視する場合は保管・供養という選択も尊重されます。
注意すべきトラブルと対処法
遺品整理で出てきた骨董品の中には、価値が分からないまま不当な安値で買い取られてしまうケースもあります。
特に「無料鑑定」や「即金買取」をうたう訪問業者には注意が必要です。
トラブル防止のポイント
- 複数業者に査定を依頼し、相場を比較する。
- 鑑定書や箱書きの写真を必ず残しておく。
- 家族全員で所有権を確認してから売却する。
- その場で即決しない。
信頼できる遺品整理業者や古美術商は、明確な見積もり・買取証明書を提示し、丁寧に説明してくれます。
心の整理としての「供養」という選択
骨董品や美術品の中には、仏像や人形、掛け軸など精神的な意味を持つ品もあります。
これらを売却することに抵抗がある場合、「供養」を選ぶことも可能です。
寺院や神社では「美術品供養」「人形供養」などの儀式を行っており、感謝を込めてお焚き上げをしてもらうことで、故人への敬意を表すことができます。
価値よりも想いを優先するこの行為は、多くの遺族にとって心の区切りとなります。
デジタル保存と相続への備え
骨董品や美術品は物理的な保管が難しく、将来的な相続トラブルの原因にもなります。
そのため、写真撮影やデジタル台帳の作成を行い、「誰がどの遺品を継ぐか」を明確にしておくことが大切です。
また、保険や資産としての価値を考慮し、専門家に依頼して適正な評価を受けることも重要です。
専門業者に依頼するメリット
遺品整理業者の中には、古物商許可・美術品鑑定士・遺品査定士などの資格を持つスタッフが在籍しているところもあります。
このような業者に依頼すると、
- 骨董品・絵画の査定と整理を同時に進行できる
- 貴重品の見落としを防げる
- 市場価値を反映した適正買取が可能
- 供養・再利用・寄付まで一括対応できる
といった大きなメリットがあります。
また、地域密着型業者であれば、地元の美術商や古道具店とのネットワークを持っており、より適正な価格での売却が期待できます。
まとめ
遺品整理の現場で見つかる骨董品や古美術品、絵画は、単なる「古い物」ではありません。
それは故人の趣味、人生観、時代背景を映し出す貴重な文化的財産です。
不用と思っても、一つひとつを丁寧に確認することで、思わぬ価値を見出すことができます。
正しい取り扱いの基本は「触らず」「捨てず」「専門家に相談する」こと。
価値ある品を守りながら、故人の想いを未来へ受け継ぐ――
それが、遺品整理における骨董品・美術品の本当の意味と言えるでしょう。






