葬儀後の手続き

2025年10月22日

葬儀が終わってからが本当の始まり

葬儀後の手続き

葬儀が終わると、ようやく一息つけると感じる方も多いですが、実際にはここから多くの重要な手続きが始まります。
亡くなった方(故人)に関する行政上・金融上の契約は、すべて相続人や遺族が整理・解約・名義変更などを行わなければなりません。
これらを怠ると、余分な費用が発生したり、法的なトラブルにつながる可能性もあります。

手続きの中には「期限付き」のものもあり、葬儀後1週間以内に行うべきもの、14日以内、1か月以内、3か月以内といった区切りがあります。
ここでは、葬儀が終わってから早急に必要な手続きと、その具体的な方法を時系列に沿って整理して説明します。


葬儀直後(~1週間以内)に行う手続き

死亡届の提出(すでに提出済みの場合も確認)

まず最初に必要なのは「死亡届」です。
これは葬儀前に提出していることが多いですが、まだの場合は速やかに提出します。

提出先:故人の住所地または死亡地の市区町村役場
提出期限:死亡を知った日から7日以内
提出者:親族・同居人・医師・看護師など
必要書類

  • 医師が発行した死亡診断書
  • 届出人の印鑑(認印で可)

役所で死亡届を提出すると、「火葬許可証」と「埋葬許可証」が発行されます。これがないと葬儀や火葬を行うことはできません。


世帯主変更届(14日以内)

故人が世帯主だった場合、世帯主変更届を役所に提出します。
世帯主が亡くなったままにしておくと、健康保険証や税金関係の書類送付先に混乱が生じます。

提出先:市区町村役場の住民課
提出期限:死亡から14日以内
持参物

  • 届出人の本人確認書類
  • 故人の死亡診断書コピーまたは死亡届の受理証
  • 新しい世帯主の印鑑

健康保険・年金関連の手続き

故人が加入していた健康保険・年金制度に応じて手続きを行います。

国民健康保険加入者の場合

市区町村役場で「国民健康保険資格喪失届」を提出します。
期限:14日以内
必要書類

  • 故人の保険証
  • 届出人の印鑑
  • 死亡診断書コピー

あわせて「葬祭費」の支給申請も可能です。
多くの自治体では、葬儀を行った人(喪主)に 3万円〜7万円程度 が支給されます。

社会保険加入者(会社員など)の場合

勤務先または社会保険事務所で「健康保険資格喪失届」を提出します。
また、健康保険から「埋葬料(または埋葬費)」が支給されます。
金額:一律5万円(勤務先によって異なる)

国民年金・厚生年金の手続き

年金受給者が亡くなった場合、すぐに「年金受給停止の届出」が必要です。
提出先:年金事務所または市区町村役場
期限:14日以内(できるだけ早めに)
必要書類

  • 年金証書
  • 故人の死亡診断書
  • 届出人の本人確認書類

同時に、「未支給年金の請求」も行います。
亡くなった月の年金は支給対象外ですが、まだ支給されていない分(未支給分)は遺族が請求できます。


介護保険の資格喪失手続き

要介護認定を受けていた場合は、介護保険証を役所に返却し、資格喪失届を提出します。
期限:14日以内
提出先:市区町村介護保険課


電気・ガス・水道などライフラインの解約・名義変更

葬儀後、故人の住居を引き続き使うかどうかによって手続きが変わります。

  • 使用を続ける場合 → 名義変更
  • 空き家になる場合 → 解約

それぞれ、各会社に電話連絡を入れ、検針日や精算方法を確認します。
インターネット契約、携帯電話、NHK、新聞なども早めに解約または名義変更しておきましょう。


葬儀後1か月以内に行う手続き

銀行口座の凍結と解約

銀行は死亡届が出されると、口座を凍結します。
凍結後は入出金・引き落とし・送金ができなくなります。

対処法

  • 相続人全員の同意を得て「遺産分割協議書」を作成し、金融機関に提出
  • 金融機関指定の書類(相続届)とともに、戸籍謄本・印鑑証明書を提出
  • 手続き完了後、預金が相続人に分配される

※葬儀費用の支払いなどで一時的に資金が必要な場合、相続人代表が「仮払い制度」を利用できる場合があります。


クレジットカード・ローン・サブスク契約の解約

クレジットカード会社に故人の死亡を連絡し、解約手続きを行います。
同時に、未払い残高がある場合は相続人が確認して対応します。

カード付帯のポイント・マイルも死亡により消滅することが多いので、使用や移行の可否を早めに確認しましょう。

サブスクサービス(Amazon、Netflix、携帯アプリなど)は、カード停止により自動解約されることがありますが、個別解約が必要な場合もあります。


生命保険・共済金の請求

故人が生命保険に加入していた場合、保険金の請求を行います。

提出先:加入していた保険会社・共済組合
期限:保険金請求は「死亡を知った日から3年以内」ですが、できるだけ早めに行うのが理想です。
必要書類

  • 保険証券
  • 死亡診断書(原本)
  • 戸籍謄本
  • 受取人の本人確認書類

また、団体信用生命保険(住宅ローンに付随する保険)に加入していた場合は、
ローンが完済扱いになることがありますので、金融機関にも確認しましょう。


不動産の名義変更

持ち家・土地などの不動産を所有していた場合、登記簿上の名義を故人から相続人へ変更する必要があります。
これを「相続登記」と呼びます。

期限:2024年からは「相続登記の義務化」が始まり、相続を知ってから3年以内に行わないと過料(罰金)が発生します。
手続き先:法務局
必要書類

  • 登記申請書
  • 被相続人・相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

司法書士に依頼すると、数万円〜十数万円程度の費用で手続き代行が可能です。


葬儀後3か月以内に検討すべきこと

相続放棄・限定承認の判断

故人に借金やローンなどの負債があった場合、相続人は 相続を放棄 するか、または 限定承認 を選ぶことができます。
これらの手続きには**期限があり、「相続開始を知ってから3か月以内」**に家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。

  • 相続放棄:すべての財産(プラスもマイナスも)を相続しない
  • 限定承認:プラスの財産の範囲で借金を返済する

手続き先:故人の住所地を管轄する家庭裁判所
必要書類

  • 申述書
  • 戸籍謄本(被相続人・申述人)
  • 収入印紙800円分
  • 郵便切手(裁判所指定額)

期限を過ぎると自動的に「単純承認」となり、借金も含めてすべて相続することになりますので注意が必要です。


相続税の申告・納付(10か月以内)

葬儀後すぐではありませんが、相続税は 「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」 に申告・納付が必要です。
課税対象になるかどうかを早い段階で税理士に相談しておくと安心です。


その他忘れやすい手続き

自動車の名義変更・廃車

故人名義の自動車がある場合、相続人が名義変更または廃車手続きを行います。
手続き先:運輸支局
必要書類:車検証・印鑑証明・戸籍謄本・遺産分割協議書など


郵便物の転送・公共料金の精算

郵便局に「転送届」を提出しておくと、故人宛の郵便物を遺族宛に転送してもらえます。
また、水道・電気・ガスなどの精算を忘れると、不要な基本料金が発生することもあるため、早めの手続きが必要です。


SNSやネットサービスのアカウント削除

現代では、Facebook、LINE、Googleなどのアカウントをどうするかも考える必要があります。
SNSによっては「追悼アカウント」などの設定ができる場合もあり、個人情報の保護のためにも早めに対応しましょう。


手続きを円滑に進めるためのポイント

手続きリストを作る

葬儀直後は気が動転しており、何から始めればいいのかわからなくなることが多いです。
まずは「やることリスト」を紙やスマートフォンでまとめ、完了したものにチェックを入れていくと混乱を防げます。

書類を一か所にまとめる

戸籍謄本、住民票、死亡診断書など、さまざまな書類を何度も提出することになります。
クリアファイルやファイルボックスにまとめ、コピーをとっておくと再提出が必要になった際に便利です。

専門家に相談する

相続関係や登記、税金関係は個人で対応するのが難しいことも多いため、
司法書士・税理士・行政書士など専門家に早めに相談することで、時間と労力を大幅に減らせます。


まとめ

葬儀が終わった後も、遺族には多くの手続きが待っています。
死亡届、健康保険・年金・銀行・不動産・相続関連など、どれも期限があり、放置するとトラブルの原因になります。

最初の1か月で「行政と金融の手続き」、3か月以内に「相続放棄の判断」、
10か月以内に「相続税の申告」と、段階的に進めていくのが理想です。

そして何より大切なのは、故人を想う気持ちを大切にしながら、
焦らず一つひとつ確実に対応していくことです。
手続きの一つ一つが、故人への“最後の責任”であり、“感謝の形”でもあります。

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