供養する遺品と供養方法

2025年10月23日

遺品の中には「捨ててはいけないもの」がある

供養する遺品と供養方法

遺品整理を進めていくと、故人が使っていた日用品や衣類、家具、家電など、さまざまな品物が出てきます。
その中には単に処分すればよいものもあれば、「供養」をしてから手放すべきものも存在します。

供養とは、亡くなった方の魂を慰め、感謝をもって物を送り出す行為です。
仏教的な考えでは、長年人が使っていた物には“魂”や“想い”が宿るとされており、特に思い出深い品や宗教的意味を持つ物を不用意に捨ててしまうと、心理的にも「申し訳ない」「気持ちが落ち着かない」と感じてしまう方が多いです。

ここでは、供養が必要とされる代表的な遺品の種類と、その具体的な供養方法について詳しく解説します。


供養が必要とされる遺品の種類

仏壇・位牌・遺影などの宗教関連の品

仏壇や位牌、遺影(写真)は、故人の魂や信仰を象徴する最も大切な遺品です。
特に位牌は「故人の魂が宿る」とされるため、処分する際には必ず供養を行います。
また、仏壇も長年家族が手を合わせてきた場所であり、感謝とともに「お焚き上げ」などの儀式を行うのが望ましいです。

供養方法の例

  • 寺院や菩提寺に依頼して「魂抜き(たましいぬき)」の読経を行ってもらう
  • その後、仏壇・位牌をお焚き上げするか、寺院で引き取ってもらう
  • 遺影は写真立てから外し、感謝を伝えながらお焚き上げや合同供養に出す

人形・ぬいぐるみ・お守りなどの「想いがこもった品」

人形やぬいぐるみ、お守りなども供養が必要な遺品の代表です。
特に人の形をしたものには魂が宿ると考えられ、ゴミとして処分するのは避けた方がよいとされています。
また、お守りやお札は神仏からの加護を受けたものですから、神社や寺院でお焚き上げをしてもらうのが適切です。

供養方法の例

  • 各地の寺院・神社で行われる「人形供養祭」に持参する
  • 郵送で受け付けている「人形供養サービス」に依頼する
  • お守り・お札は授与を受けた神社やお寺に返納する
  • 返納先がわからない場合は、近隣の神社・寺院に相談する

写真・アルバム・手紙・日記などの思い出品

写真や手紙、日記などは、故人の人生や家族との思い出が詰まった大切な遺品です。
単に燃えるゴミとして捨てるのは気が引けるという方も多いでしょう。
特に、故人の姿が写った写真や筆跡の残る手紙には、「魂のかけら」が感じられることがあります。

供養方法の例

  • 寺院でお焚き上げを依頼する
  • 専門業者による「写真供養」「手紙供養」を利用する
  • 一部をデジタル化して保存し、残りを供養の上で処分する
  • 家族で感謝の気持ちを伝えてから静かに焼却する(可能であれば僧侶の読経を伴うとより丁寧)

なお、近年では写真をクラウド上に残す「デジタル供養」も増えており、
データとして保存しながら物理的な品をお焚き上げするという方法も選ばれています。


故人が愛用していた衣類・装飾品・遺品

長年愛用していた衣類やアクセサリー、時計、メガネなども、供養をしてから手放す方が多いです。
特に、身につけていたものには「気」や「念」が宿ると考えられています。

供養方法の例

  • 寺院で「衣類供養」「装飾品供養」としてまとめてお焚き上げを依頼する
  • 貴金属など再利用できるものは、供養をした上で買取に出す(供養証明書を発行する業者もある)
  • 形見分けとして家族が引き継ぐ場合も、一度僧侶にお経を上げてもらうと安心

仏具・神棚・お札・お経本など宗教性のある道具類

これらも信仰対象に関わるため、粗末に扱うことは避けるべきです。
特に神棚やお札は、神社での「お焚き上げ」が基本です。

供養方法の例

  • 仏具や数珠は寺院で供養
  • 神棚やお札は神社で返納または「古札納所」へ持参
  • お経本やお数珠は寺院で読経供養をしてもらう

ペット関連の遺品

近年増えているのが、ペットの遺品の供養です。
ペットも家族の一員として暮らしてきたため、首輪・食器・洋服などを処分するのが辛いという方が多く、
ペット霊園や動物供養専門寺院での供養が広く行われています。

供養方法の例

  • ペット霊園や動物供養寺で一緒にお焚き上げ
  • ペットの写真や遺品をまとめて合同供養
  • 家庭で祈りを捧げ、感謝の言葉を添えて手放す

デジタル遺品(スマホ・PC・SNS)

一見「物」ではありませんが、近年増えているのがデジタル遺品の供養です。
故人のスマートフォンやパソコン、SNSアカウント、メールなどには多くの個人的情報や思い出が残っています。
これをどう扱うかも「現代の供養」の一部と考えられています。

供養方法の例

  • データをバックアップしてから削除
  • メモリアルとして写真やメッセージを保存
  • SNSやクラウド上で「追悼ページ」や「デジタル墓」を作成
  • 専門業者に依頼し、データ削除と供養証明を受ける

供養の方法と手続きの種類

お焚き上げ(最も一般的な方法)

お焚き上げとは、寺院や神社で供養の読経を行い、供養対象の品を火にくべて浄化する儀式です。
炎によって魂を天に送り、感謝とともにお別れをするという日本古来の風習です。

特徴

  • 寺院・神社で直接持参するほか、郵送供養も可能
  • 年に数回「お焚き上げ供養祭」を開催している寺院も多い
  • 仏壇、人形、写真、衣類など幅広い品が対象

注意点

  • 一般ゴミとは混ぜず、清潔な状態で包む
  • 可燃性・有害物質のある品(プラスチック・電池入り製品など)は事前に相談する

合同供養(まとめて供養する方法)

複数の人の遺品をまとめて一度に供養する方法です。
費用を抑えつつ、きちんと供養を行いたい人に適しています。

特徴

  • 寺院や霊園で合同読経・焼納を行う
  • 個別供養よりも費用が安く、予約しやすい
  • 郵送で受け付ける業者も多い

個別供養(一点ずつ丁寧に)

特に大切な遺品や家族の想いが強く込められた品は、個別での供養が望まれます。
故人の愛用品や遺影、仏壇などがこれにあたります。

特徴

  • 僧侶が一つひとつ読経を行い、品に感謝を込めて供養
  • 個別の「供養証明書」を発行してくれる場合もある
  • 寺院や葬儀社に直接依頼できる

自宅での供養(心を込めた見送り)

寺院に依頼できない場合や、身近な形で感謝を伝えたい場合には、自宅供養も可能です。
感謝の言葉を添えて手を合わせ、静かに手放すことも立派な供養です。

方法の例

  • 白布に包み、「ありがとう」と言葉をかけてから処分
  • 家族で小さな祭壇を作り、手を合わせる
  • 燃える素材のものは少量をお清めした上で焼却

供養を行うときの注意点

  • 供養に出す前に、個人情報・貴重品が残っていないかを必ず確認する
  • 業者に依頼する際は、供養証明書を発行できるかどうかをチェックする
  • お焚き上げ代行サービスを利用する際は、実際に提携寺院で供養しているかを確認する
  • 信仰の違いにより供養方法も異なるため、故人の宗派や家族の考え方を尊重する

供養をする意味

供養は「ものの魂を鎮める」ためだけでなく、残された人の心の区切りでもあります。
長年大切にしてきた物を手放すとき、人はどうしても寂しさや罪悪感を覚えます。
その感情を“ありがとう”という気持ちに変えるのが、供養の本質です。

供養を経て遺品を送り出すことは、故人との絆を改めて感じる機会でもあります。
「ありがとう」「お疲れさま」「安心してね」——そうした想いを込めることで、遺品整理は単なる作業ではなく、“心の整理”へと変わっていきます。


まとめ

供養が必要な遺品とは、故人の魂や想いが深く宿っている品々です。
仏壇や位牌、人形やぬいぐるみ、写真、手紙、愛用品など、どれも故人の人生の証です。

それらをただの“モノ”として捨てるのではなく、感謝をもって供養することが、故人を敬い、残された家族の心を癒やす最も大切な行為です。

現代では、寺院供養だけでなく、郵送供養・デジタル供養・ペット供養など、さまざまな方法が選べる時代になりました。大切なのは「どの方法を選ぶか」よりも、「どんな気持ちで手放すか」です。

故人が大切にしてきた遺品を、敬意と感謝を込めて見送る——それが本当の“遺品供養”であり、遺品整理の最後にして最も尊い一歩です。

遺品整理とは

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