デジタルアカウントの保管

2025年10月9日

デジタルアカウントとは?

デジタルアカウントの保管

近年、私たちの生活は多くのデジタルサービスに支えられています。ネットバンキング、SNS、クラウドストレージ、オンラインショッピング、電子メールなど、あらゆる行動がインターネット上のアカウントによって管理されています。これらの「デジタルアカウント」は、いわば個人の“もう一つの資産”であり、正しく管理しなければ金銭的・個人情報的なリスクが生じます。
一方で、所有者が亡くなった際には、家族がこれらのアカウントの存在やログイン情報を把握できず、解約やデータ引き継ぎに困るケースが多発しています。デジタル遺品としてのアカウント管理は、現代の遺産整理において非常に重要なテーマになっています。


デジタルアカウントの主な種類

デジタルアカウントは目的や用途によって多様ですが、代表的な種類を以下に分類できます。

金融系アカウント

銀行のインターネットバンキング、証券会社のオンライン取引口座、クレジットカードのマイページ、電子マネーや仮想通貨ウォレットなどが該当します。これらは金銭的価値を持つため、相続財産として扱われる可能性があります。所有者が亡くなった後、残高や未払いがある場合には相続手続きや支払い義務が発生します。

SNSアカウント

Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、LINE、TikTokなどのSNSは、個人の交友関係や思い出を記録する場です。これらのアカウントにはプライベートな情報が多く含まれているため、家族がどう扱うかをあらかじめ決めておく必要があります。特にFacebookなどは「追悼アカウント」機能を設けており、亡くなった人の投稿をそのまま残すか削除するかを選択できます。

メールアカウント

GmailやYahoo!メールなどは、他のサービスのログインやパスワードリセットに使われることが多く、最も重要なアカウントの一つです。もし家族がこのメールにアクセスできなくなると、他のデジタル資産の管理も難しくなります。

クラウドストレージ・写真共有系アカウント

Googleドライブ、iCloud、Dropbox、OneDriveなど、データを保存するためのクラウドサービスです。仕事のデータ、家族の写真、個人のメモなどが保存されているため、遺族がデータを取り戻せないと大切な記録が失われてしまいます。

サブスクリプション・ショッピング系アカウント

Amazon、楽天、Netflix、Spotifyなどのショッピング・定額サービスも重要です。これらは自動課金が設定されている場合が多く、所有者の死後も契約が続き、料金が引き落とされ続けるリスクがあります。

ビジネス・クラウドツール

会社員や個人事業主が使用するビジネス関連のアカウント(Google Workspace、Slack、ChatGPT、Zoomなど)も個人が管理している場合は遺族が把握しにくい分野です。特に個人事業者の場合、事業継承にも大きく関わります。


デジタルアカウントの保存方法

所有しているアカウントの数が多くなると、自分でも管理しきれなくなることがあります。安全で確実に管理するためには、次のような方法を組み合わせるのが有効です。

アカウント一覧表を作成する

利用しているアカウントの名称、ログインID、登録メールアドレス、契約状況、支払い方法などを一覧化しておくことが大切です。エクセルやノートでも構いませんが、第三者に見られないように保管場所を工夫しましょう。

パスワード管理アプリを利用する

LastPass、1Password、Bitwardenなどのパスワード管理アプリを使えば、アカウント情報を暗号化して一括管理できます。家族に「マスターパスワード」の保管方法を伝えておくことで、万が一のときにもアクセス可能になります。

紙媒体でのバックアップ

デジタルデータは消失リスクもあるため、最小限の重要情報(銀行や保険、SNSログイン情報など)は紙に書いて保管する方法もあります。紙媒体はハッキングのリスクが低い一方、紛失や火災などの物理的リスクに注意が必要です。

遺言やエンディングノートへの記載

デジタルアカウントに関する情報をエンディングノートや遺言に残しておくことは非常に有効です。どのアカウントを誰に引き継ぐか、どれを削除してほしいかなど、本人の意思を明確に残すことができます。

クラウド上の「デジタル遺品サービス」を活用

最近では、デジタル遺品管理専用のサービスも登場しています。生前に登録しておけば、死亡が確認された際にあらかじめ指定した家族へ情報を引き継ぐ仕組みです。代表的なものに「デジタル遺品管理クラウド」や「マイデジタル資産ノート」などがあります。


所有者が亡くなったときの対策

デジタルアカウントは形のない財産ですが、所有者が亡くなった後もその影響は大きく残ります。次のような点を意識して準備しておくことが重要です。

相続人がアクセスできる仕組みを用意する

GoogleやAppleなどの一部サービスでは、「アカウント継承機能」や「信頼できる連絡先の指定」ができます。Googleでは「非アクティブアカウントマネージャー」を設定しておくと、一定期間ログインがない場合に指定した人へデータを引き渡すことが可能です。Appleも「デジタルレガシー機能」で、死亡後に家族がアクセスできるように設定できます。

定期的に情報を更新する

アカウントやパスワードは頻繁に変更されるため、作成した一覧や遺言内容も定期的に見直す必要があります。半年〜1年に一度を目安に更新しておくと安心です。

不要なアカウントは早めに整理

使わなくなったアカウントや古いサービスを放置しておくと、個人情報漏えいのリスクが高まります。定期的に不要なアカウントを削除しておくことで、遺族が後で困ることを防げます。

クレジットカード連携の確認

ショッピングサイトやサブスクリプションサービスにクレジットカードが紐づいている場合、所有者が亡くなっても自動的に課金が続くことがあります。家族が解約できるよう、契約内容と支払い方法を一覧化しておくことが大切です。

SNSの扱いを決めておく

SNSは単なるアカウントではなく、思い出や交友関係の記録でもあります。削除するか、追悼アカウントとして残すかを事前に決めておくことが望ましいです。特にFacebookやInstagramなどは、事前に「追悼管理者」を設定できる機能があります。


デジタルアカウントを守る意識の重要性

デジタルアカウントは目に見えない資産でありながら、日常生活・金融・人間関係すべてに直結しています。もし所有者が突然亡くなった場合、家族がログイン情報を知らなければ、銀行口座の情報や重要な契約書、さらには写真や思い出までも失われる可能性があります。

そのため、「自分がいなくなった後に家族が困らないようにする」という意識で、アカウントの整理と管理を始めることが大切です。生前整理の一環として、デジタル面の管理を行うことは現代における新しい“終活”の形でもあります。


まとめ

デジタルアカウントは、現代の私たちにとって財産と同等の価値を持つ存在です。
銀行・SNS・クラウド・メールなど、さまざまなアカウントを安全に保存し、所有者が亡くなった後の引き継ぎ方法を準備しておくことで、家族の負担を大きく軽減できます。

・アカウント情報を一覧化して定期的に更新する
・パスワード管理ツールやエンディングノートを活用する
・クラウドの「デジタル遺品サービス」や継承機能を設定する

これらを実践することで、デジタル社会における「遺品」も安全に管理することができます。
デジタルアカウントの整理は、今や誰にとっても欠かせない“新しい相続準備”といえるでしょう。

デジタル遺品

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