相続したお家の解体
相続によって古い家を取得したものの、老朽化が進んで住めない状態であったり、維持費や固定資産税の負担が重かったりすることがあります。そのような場合、不動産の有効活用や売却を目的に建物を解体する選択をする方が多くいらっしゃいます。しかし、家を取り壊すにはいくつかの手続きや法律上の規制があり、費用面でも事前に把握しておく必要があります。
解体前に必要な確認事項
まず解体に取り掛かる前に、相続登記を済ませておくことが重要です。登記簿上で被相続人の名義のままでは、解体工事の契約や申請がスムーズにできません。相続人が正式に所有者となることで、解体業者や役所との手続きが可能になります。
次に、その建物が「空き家対策特別措置法」の対象になっていないかを確認します。管理が不十分で危険と判断された建物は「特定空き家」として指定されることがあり、その場合は自治体から指導や解体命令が出ることもあります。このようなケースでは、補助金制度が活用できる可能性があります。
また、古い家の場合、屋根材や断熱材にアスベストが使用されていることがあり、その場合は解体工事に追加の検査や処理費用が必要です。アスベストの有無は専門業者による事前調査で確認します。
解体に必要な手続き
建物を解体するには、主に以下の手続きが必要となります。
- 建設リサイクル法に基づく届出
延床面積が80㎡を超える建物を解体する場合は、工事に着手する7日前までに自治体へ「解体工事に関する届出」を提出しなければなりません。これは廃材の適正処理を徹底するための制度です。 - 道路使用許可申請
解体工事で重機や車両を道路に一時的に停める必要がある場合、警察署に道路使用許可の申請を行う必要があります。 - ライフラインの停止手続き
電気、ガス、水道の供給を停止・撤去するため、それぞれの事業者に解体工事前に依頼をします。特にガス管や水道管の撤去は安全面で重要です。 - 滅失登記の申請
建物を解体した後は、法務局で「建物滅失登記」を申請する必要があります。これは不動産登記簿から建物を削除する手続きで、解体後1か月以内に行うことが義務付けられています。滅失登記をしないままにしておくと、将来土地を売却する際にトラブルになるため注意が必要です。
解体費用の相場
解体費用は建物の構造や規模、立地条件によって大きく変わります。一般的な目安は以下の通りです。
- 木造住宅:1坪あたり約3万〜5万円
- 鉄骨造住宅:1坪あたり約5万〜7万円
- RC造(鉄筋コンクリート造):1坪あたり約7万〜10万円
例えば30坪(約100㎡)の木造住宅であれば、解体費用はおおよそ100万円〜150万円程度が目安となります。ただし、周囲に住宅が密集していて重機が入りにくい場合や、廃材処分費が高額になる地域ではさらに費用が増えることがあります。
また、アスベストが含まれている場合には追加費用がかかります。アスベスト除去費用は数十万円から100万円を超えることもあり、特に吹き付けアスベストが使われている場合は高額になります。
補助金や税制優遇制度
自治体によっては、老朽化した空き家を解体する場合に補助金を支給しているところがあります。補助金額は数十万円から100万円程度まで幅がありますので、解体を検討する際には自治体の窓口に確認することをおすすめします。
また、建物を解体して更地にすると固定資産税が上がる点にも注意が必要です。住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大で6分の1まで軽減されています。建物を取り壊すとその特例がなくなり、翌年度から税額が大幅に増えることになります。そのため、解体後すぐに土地を売却するか、新しい住宅を建てる計画がある場合に解体を行うのが合理的です。
解体業者の選び方
解体工事は専門業者に依頼する必要がありますが、費用や対応は業者によって大きく異なります。数社から見積もりを取り、工事内容や費用の内訳を比較することが大切です。特に廃材処分費やアスベスト処理費用が適正に見積もられているかを確認しましょう。格安をうたう業者の中には、不法投棄を行う悪質な業者も存在するため注意が必要です。
手続きと費用の全体像
相続した古い家を解体するには、まず相続登記を済ませ、ライフラインの停止や自治体への届出を行い、解体後は滅失登記をするという流れになります。費用は建物の構造や大きさによりますが、木造30坪程度なら100万〜150万円程度が目安です。補助金を活用できる場合もあるため、事前に自治体や専門家に確認することが重要です。

