遺品整理を行うタイミング

2025年8月8日2025年10月23日

最適な時期とその判断基準

故人が亡くなった後、家族が直面する最初の大きな課題のひとつが「遺品整理をいつ行うか」です。
遺品整理は、感情的にも体力的にも負担の大きい作業です。
しかし、手続きや生活の事情によって、ある程度のタイミングを見極めることが重要になります。
ここでは、遺品整理を行う最適な時期や注意すべきポイントを、心情面・実務面の両方から具体的に解説します。

遺品整理を「いつ始めるか」が大切な理由

遺品整理のタイミングは、遺族の気持ちの整理だけでなく、法的手続きや生活環境の維持にも関わってきます。
早すぎると気持ちの整理がつかず、後悔を残してしまうことがあります。
逆に遅すぎると、相続や賃貸の契約、家の管理などでトラブルに発展することもあります。

つまり、遺品整理の「正しいタイミング」とは、
感情・時間・法的期限のバランスを取ることが大切なのです。

一般的な遺品整理の時期の目安

遺品整理を始める時期には明確な決まりはありませんが、一般的には以下のような時期が多く選ばれています。

葬儀後から四十九日までの間

葬儀が終わり、四十九日の法要を迎えるまでの間に少しずつ整理を始めるケースです。
四十九日は仏教で「魂がこの世を去り、成仏する」とされる節目です。
そのため、この期間に身の回りの整理を進めることを「供養の一環」として行う人も多くいます。

この時期に向いているのは、以下のような作業です。

冷蔵庫や食品類など、傷みやすいものの処分
病院・施設から持ち帰った荷物の整理
貴重品・重要書類の確認（通帳、保険証券、遺言書など）

ただし、思い出の品や衣類など、感情的に手放しづらいものは無理に整理せず、「後回し」にしても構いません。

四十九日後から三回忌まで

もっとも多くの人が本格的に遺品整理を行う時期です。
気持ちの整理がつき始め、冷静に判断できるようになる頃です。
また、法要などで親族が集まるタイミングが多く、協力しながら進めやすい時期でもあります。

この時期には、以下のような整理を行うと良いでしょう。

家具・家電・衣類などの仕分け
形見分け（家族や親しい人への譲渡）
不用品の処分・リサイクル手配
仏具や写真などの供養品の整理

特に一周忌・三回忌の前後は、親族が集まりやすいため、遺品の扱いについて相談・合意を得やすい時期です。

相続や不動産の整理を行うタイミング

もし故人が持ち家を所有していた場合、相続登記や不動産売却の前に遺品整理を行う必要があります。
相続登記の義務化（2024年4月施行）により、
不動産を相続した場合は3年以内に登記手続きを行わなければなりません。

また、賃貸住宅に住んでいた場合は、早めに退去手続きを行うため、
1か月〜2か月以内に遺品整理を完了させるケースが多く見られます。

このように、住居の契約や財産の相続に関わる場合は、
感情面よりも「手続きの期限」を優先せざるを得ないこともあります。

早めに遺品整理を行うメリットとデメリット

メリット

住居の管理費・家賃の負担を軽減できる
相続や名義変更などの手続きをスムーズに進められる
早期に家を売却・貸し出しできる
時間が経つほど劣化する物（食品・紙類・衣類など）を防げる

デメリット

故人への喪失感が強く、気持ちの整理がつかないまま進めて後悔することがある
判断を急ぎすぎて、大切な形見や書類を処分してしまう可能性がある
家族間で意見の食い違いが起きやすい

早めに進める場合は、「感情的な整理」と「実務的な整理」を分けて行うことが大切です。
たとえば、書類や貴重品の確認など必要最低限のことだけ先に済ませ、
思い出の品は一定期間保管してから改めて見直すと良いでしょう。

遅めに遺品整理を行うメリットとデメリット

メリット

心の整理がつき、冷静に判断できる
家族や親族と相談しながら時間をかけて整理できる
供養や形見分けを丁寧に行える

デメリット

空き家の維持費（光熱費・固定資産税・管理費など）が発生する
家財の劣化・カビ・害虫被害が進む
不動産の売却や相続手続きが遅れる
遺品の量が多く、精神的にも負担が増す

気持ちを大切にするあまり整理を先延ばしにしてしまうと、結果的に大きな負担となることがあります。
特に、空き家や賃貸住宅の場合は、時間とともに費用やリスクが増すため、
半年〜1年以内を目安に整理を完了させるのが理想です。

心の準備ができたタイミングも大切に

遺品整理のタイミングは、人それぞれ違います。
「今はまだ手をつけられない」「見たくない」という気持ちは自然なものです。
無理をして片付けると、後から後悔や喪失感が強く残ることがあります。

もし整理を始める気持ちになれないときは、

写真だけを少し見る
手紙やアルバムを1冊だけ手に取る
部屋の掃除だけをしてみる

といった小さなステップから始めるのがおすすめです。

やがて「これは残したい」「これは手放そう」と自然に思えるようになったときが、
本当の意味で遺品整理を始めるタイミングなのです。

タイミングを判断する3つのポイント

心の整理がついたか

故人への悲しみが薄れ、「故人の思い出を大切にしながら整理できる」状態であればベストです。
無理に早めず、自然に受け入れられる時期を待ちましょう。

生活上の必要性

家を売却・解体する予定や、遺族が引っ越す必要がある場合は、期限を意識してスケジュールを立てましょう。
また、公共料金や保険・年金などの手続きには故人の書類が必要になることも多いため、
「探す目的」を明確にしておくと整理が進みやすくなります。

家族の協力体制

家族全員が納得してから始めることも重要です。
一人で進めると感情的になりやすく、判断を誤ることもあります。
できれば、複数人で作業する日程を調整し、意見を共有しながら行いましょう。

遺品整理を進めるときの実務的スケジュール例

以下は、葬儀後から半年以内に遺品整理を完了させる一般的なスケジュール例です。

時期	主な作業内容
葬儀後〜2週間	生活必需品・貴重品の確認、冷蔵庫・食品などの処分
四十九日まで	仏具や写真の整理、供養の準備、重要書類の分類
2〜3か月後	家具・家電・衣類の仕分け、不用品回収・買取の検討
4〜6か月後	形見分け・供養品の処理、清掃・家屋の再利用または解体

もちろん、すべての家庭に当てはまるわけではありません。
自分たちのペースで、無理のない計画を立てることが大切です。