相続した不動産を登記をしないとどうなる?

相続した不動産の登記

亡くなった方が所有していた土地や建物について、相続人の名義に変更するためには登記が必要です。登記をして初めて第三者に対して権利を主張できるようになります。しかし、相続が発生しても登記を行わずに放置してしまうと、相続人やその子孫にまで大きな不利益が及ぶことがあります。ここでは、相続登記をしない場合にどのような問題が起きるのかを具体的にご説明いたします。


不動産を売却・活用できない

相続登記をしないと相続人は不動産を自由に売却したり、担保に入れたりすることができません。登記簿上は所有者が亡くなった方のまま残っているため、実際には相続人が権利を持っていたとしても、法的には第三者に証明することができないのです。例えば相続人がその土地を売却したいと思っても、買主からすれば登記簿上の所有者との取引が必要になるため、名義が故人のままでは契約が成立しません。その結果、不動産を処分して現金化することができず、相続税や生活資金の確保に困ってしまうケースも少なくありません。

複数の相続人がいる場合の複雑化

相続人が複数いる場合に登記を放置すると、時間の経過とともに権利関係が複雑になっていきます。相続発生時に兄弟3人が相続人であった場合、すぐに遺産分割協議をして登記をすれば比較的スムーズに処理できます。しかしそのままにして一人が亡くなると、その子どもたちが代わりに相続人となり、さらに世代が進めば孫やひ孫にまで権利が及びます。このように相続人の数が雪だるま式に増えてしまい、最終的には数十人が関係者となることもあります。その結果、全員の合意を得なければならず、所在不明者や意見の対立があれば事実上登記ができなくなることもあります。

固定資産税を巡る混乱

固定資産税の納税義務についても問題が生じます。法律上、固定資産税の通知は登記簿に記載されている所有者に送られます。そのため、名義が被相続人のままでは毎年亡くなった方の名前で通知が届くことになります。実際には不動産を使っている相続人が税金を支払うことになりますが、法的に不明確な状態が続くと「自分には支払う義務がない」といった主張が出て、相続人同士で揉めてしまうことがあります。中には納税を拒む相続人が出てきて、自治体から強制的に差し押さえを受ける事態に発展することもあります。

第三者とのトラブル

第三者との関係でもトラブルが起こりやすくなります。例えば、不動産の一部を他人が無断で使っていたとしても、登記上の権利者が故人のままでは、相続人が裁判などで権利を主張するのが難しくなります。また、近隣との境界争いが起きた際も、名義がはっきりしていないために解決が長引いてしまう可能性があります。さらに、相続人の一人が勝手に「自分が所有者だ」と言って他人に貸し出したり売却を持ちかけたりすれば、他の相続人が被害を受けることにもつながります。

所有者不明土地の問題と登記義務化

長年登記をしないまま放置されると「所有者不明土地」となり、社会的な問題にも発展します。特に地方の山林や農地では、何十年も相続登記がされないまま世代交代を重ね、名義が曽祖父母のまま残っているケースも多いのです。こうした土地は公共事業や都市開発の妨げになり、国全体の課題となっています。この背景から、2024年4月からは相続登記が義務化され、相続があったことを知った日から3年以内に登記をしなければ、10万円以下の過料が科されることになりました。以前は「登記をしなくても罰則がない」状況でしたが、今後は法律によってきちんと手続きをしなければならないのです。

金融機関との取引への影響

金融機関との取引にも影響します。相続人が不動産を担保に融資を受けたいと思っても、名義が故人のままでは抵当権を設定できません。そのため資金調達が不可能となり、事業や生活に支障をきたすこともあります。相続税や他の税金を支払うために不動産を売却したい場合でも、登記をしていなければ買主が現れず、資金を用意できないまま期限を迎えてしまう恐れがあります。

相続放棄や承認への影響

相続登記をしないことで相続放棄や遺産分割に関する選択肢が狭まってしまう場合もあります。本来であれば相続開始から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄をすれば、財産や借金の負担を免れることができます。しかし、登記をせずに放置したまま実際にその不動産を使用していたり、固定資産税を支払っていたりすると、裁判所から「相続を承認した」とみなされてしまう可能性があります。そうなると不動産の維持管理や税負担を避けられなくなってしまいます。

親族間の関係悪化

相続登記をしないことで親族間の人間関係が悪化するリスクもあります。不動産の管理や処分について「誰が責任を持つのか」「誰が税金を払うのか」といった問題を先送りにすると、いずれ感情的な対立に発展します。特に相続人が全国各地に住んでいる場合や、世代が変わって交流が薄れている場合には、協議をすること自体が難しくなります。その結果、不動産が活用されないまま荒廃したり、無用な争いが長期化したりすることもあります。

早めの登記が重要

以上のように、不動産の相続登記をしないことは、売却や活用ができない、納税義務が不明確になる、第三者とのトラブルが起きる、社会的な課題になるなど、多方面で大きな問題につながります。そして現在は法律で義務化されているため、放置すれば過料のリスクまで生じます。相続が発生した際には、できるだけ早めに手続きを進めておくことが非常に大切です。

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