生前整理で見落としがちなもの

生前整理は、自分が元気なうちに身の回りの物や財産を整理し、将来の家族の負担を軽くするための大切な準備です。近年は「終活」の一環として注目され、遺品整理業務の現場でも「もっと早く整理をしておけばよかった」という声を耳にすることが少なくありません。しかし実際に取り組んでみると、目に見える物の片付けや不要品処分に気を取られ、思いのほか重要なものを見落としてしまうケースが多くあります。ここでは、生前整理において特に注意すべき「見落としがちなもの」についていくつか紹介します。

1. 契約関係や手続きに関する情報

日常生活の中で利用している契約の多くは、整理の際に忘れられやすいものです。電気・ガス・水道・インターネット・携帯電話などの契約情報、または各種保険やサブスクリプションサービスなどは、書面がなくても引き落としで利用しているケースが増えています。整理を怠ると、解約や名義変更の手続きが遺族に重くのしかかります。契約先やID・パスワードを一覧にまとめておくことは、とても重要です。

2. デジタル遺品

近年急増しているのが「デジタル遺品」の問題です。スマートフォンやパソコンに保存されている写真・動画・メール・SNSのアカウント・インターネットバンキングの情報などは、目に見えないため存在自体を家族が知らない場合があります。特にSNSやネット証券口座、暗号資産などは、適切に引き継がれなければ凍結される恐れもあります。生前整理では、デジタルデータの扱いを明確にしておくことが欠かせません。

3. 思い出の品や家族にとっての価値あるもの

本人にとっては不要と思っても、家族にとって大切な記念品である場合があります。例えば古いアルバム、手紙、趣味の作品、日記、さらには食器や家具など、一見何気ない品が遺族にとって「かけがえのない思い出」となることは少なくありません。全てを一人で判断せず、家族と話し合いながら整理を進めることで、後悔を減らすことができます。

4. 財産や相続に関わるもの

預金通帳、不動産の権利証、株式や投資信託の証書、保険証券などの財産関連の書類も見落とされやすい項目です。紙の書類だけでなく、近年はネット銀行やネット証券を利用している方も多く、IDやパスワードが分からなければ相続手続きに支障をきたします。また、借金やローン、保証人契約といった「マイナスの財産」も忘れがちですが、相続時には大きな問題になる可能性があります。

5. 医療・介護に関する意思表示

生前整理は物の片付けだけでなく、これからの暮らしを見据えた準備でもあります。延命治療を希望するかどうか、介護が必要になった場合に誰にどのように世話をしてほしいのか、エンディングノートや公正証書遺言などで意思を明確に残すことが重要です。これを曖昧にしておくと、家族が判断に迷い、精神的に大きな負担を背負うことになりかねません。

6. ペットの行き先

意外と忘れられるのがペットの存在です。犬や猫などの家族同然の存在を、残された家族が必ず引き取れるとは限りません。ペットの世話を誰に託すのか、費用はどうするのかを事前に決め、信頼できる人や施設に依頼できる体制を作っておくことが望ましいでしょう。

7. 家族への伝達・共有不足

最も多い見落としは、整理した内容を「家族に伝えていない」ことです。どれだけ整理や記録をしても、家族が知らなければ意味がありません。エンディングノートを作成したり、定期的に家族へ報告したりすることで、確実に引き継ぐことができます。

まとめ

生前整理は「片付け=物の処分」と思われがちですが、実際には契約・デジタル情報・財産・思い出・意思表示など、多岐にわたる準備が必要です。見落としがちなものほど、後々大きなトラブルや後悔につながります。大切なのは「自分の視点だけでなく、残される家族の立場から考えること」です。家族と話し合いながら一つひとつ確認していくことで、本当に安心できる生前整理が実現できます。

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