故人の車の廃車手続き

2025年11月17日

故人の車の廃車手続き

家族が亡くなったあと、遺品の整理と並行して必ず行わなければならないのが 自動車の名義変更(相続手続き)または廃車手続き です。車は法律上「動産」として扱われる相続財産であり、故人名義のまま公道で使用したり、売却したり、任意保険を変更することはできません。

また、車検や自動車税、保険料などの問題もあるため、車に乗らないのであれば、早めに廃車手続き(抹消登録)を行うことが極めて重要 です。

ここでは、故人の車を廃車にする際に必要な手続き、必要書類、手順、注意点、相続関係書類の扱い、費用や期間などについて、実務的にわかりやすく詳細に説明します。


故人の車は「相続財産」になる

まず大前提として、故人名義の車はすべて 相続財産 となります。

  • 車検証
  • 自動車税
  • 任意保険
  • 車庫証明の名義

これらはすべて故人名義となっているため、廃車も売却も相続人が代理で行うことはできません。
必ず 相続人としての立場 を証明して手続きする必要があります。


廃車には2種類ある

自動車の廃車手続きには、目的によって2種類があります。


一時抹消登録(車を一時的に使用しない)

  • 車を今後使用する予定はないが、輸出する可能性がある
  • 部品取り車にしたい
  • 一時的に保管したい(廃車するか売るか未定)

という場合に行う手続き。

ナンバーを返却し、車は公道で走れなくなりますが、再登録すれば再び乗れます。


永久抹消登録(完全に廃車する)

車を完全に解体し、公道で二度と走れない状態にする手続き。一般的な「廃車」がこれです。

  • 車を乗らない
  • 処分したい
  • 廃棄物として手放す
  • 買取業者に引き渡す

ほとんどのケースがこの「永久抹消登録」になります。


故人の車を廃車するための前提:一度相続する必要がある

故人名義の車は、相続人に名義を移さないと廃車手続きができません

つまり、

(1)故人 → 相続人への名義変更(相続)
(2)相続人 → 廃車手続き(抹消登録)

という2段階の手続きが必要です。

ただし、実務では
「相続→廃車」を同時に進められるケースが多く、
相続人の代表者を決めて、その人が陸運局で手続きを行います。


故人の車の廃車に必要な書類(非常に重要)

廃車手続きに必要な書類は、以下の2つに大別できます。


相続関係を証明する書類(必須)

故人の財産を相続するためには、相続人が誰かを証明する必要があります。

① 故人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)

これにより、

  • 誰が相続人か
  • 子ども・配偶者の有無
  • 養子の有無

などが証明されます。


② 相続人全員の戸籍謄本

各相続人が確定するために必要。


③ 相続人全員の「印鑑証明書」

相続人全員の実印が必要です。
なぜ必要かというと、車の処分は「相続財産を処分する行為」なので、相続人の合意が必要だからです。


④ 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印押印)

内容:

  • 「誰が車を相続するか」を明記
  • 相続人全員の署名・押印
  • 形式自由

例文:
「故 〇〇〇〇の所有する自動車(車台番号×××××)は、長男△△が相続し処分するものとする。」

これがないと、相続人代表者が陸運局で廃車手続きができません。


車の廃車手続きに必要な車両書類

ここからは通常の廃車必要書類です。


① 車検証

故人名義の車検証。
これがないと廃車できません。


② ナンバープレート(前後2枚)

永久抹消の場合は必須。
亡くなった方の車庫で見つからない場合は「再交付手続き」が必要です。


③ 相続する人の身分証明書(運転免許証など)

手続きの本人確認のため必要です。


④ 委任状(代理人が手続きする場合)

廃車代行業者が行う場合は必須。


⑤ 自賠責保険証明書

廃車後、解約または還付手続きに使用します。


故人の車を廃車する流れ(具体的手順)

ここからは、最も実務的な手順を示します。


STEP1:車の状態を確認する

  • 車が動くか
  • 車検の残り期間
  • 事故車・不動車か
  • 買取価値があるか

価値がある場合、「廃車」ではなく「売却」が可能で、廃車より得になります。


STEP2:相続人を確定する(戸籍収集)

前述の戸籍を揃えて相続関係を確定します。

  • 配偶者
  • 子ども
  • 兄弟姉妹

などの相続関係により、必要な戸籍数が変わります。


STEP3:遺産分割協議書を作成する

車を誰が相続し、廃車手続きを行うかを決定します。

  • 相続人全員の同意
  • 全員の署名・実印
  • 印鑑証明書添付

これがないと手続きはできません。


STEP4:陸運局(運輸支局)に行き、「相続による名義変更」を行う

ここで

故人 → 相続人

へ名義変更を行います。

書類:

  • 戸籍一式
  • 遺産分割協議書
  • 車検証
  • 印鑑証明書
  • 申請書(陸運局で入手)

これを行わないと、廃車はできません。


STEP5:相続人名義になった車を廃車(抹消登録)する

ここで本体の廃車手続きを行います。

必要な書類:

  • 車検証
  • ナンバープレート
  • 印鑑証明書
  • 申請書
  • 手数料350円前後
  • 自賠責の証明書

陸運局の「抹消登録窓口」で手続きします。


STEP6:自動車税・軽自動車税の還付手続き

廃車すれば、自動車税の還付(普通車のみ)が発生します。

  • 4月に払った税金が月割で戻る
  • 還付先は相続人名義の口座

軽自動車は還付がありません。


STEP7:自賠責保険の解約・還付

自賠責は未経過期間分の返金があります。

手続き:

  • 保険会社に解約依頼
  • 廃車証明書の提出

STEP8:任意保険の解約 or 名義変更(等級引き継ぎ)

故人の任意保険は自動的に解約されません。

  • 相続人が解約
  • 等級を家族が引き継ぐことも可能

任意保険の扱いは会社ごとに異なります。


死後に無断で車に乗ると違法(重要)

よくあるトラブル:

  • 家族が故人の車をそのまま乗り続ける
  • 葬儀のために無断使用した
  • 名義変更せずに乗っていた

これは 道路交通法違反 だけでなく、事故時は保険が使えません。

事故を起こした場合:

  • 任意保険は無効
  • 相手への損害賠償は全額自己負担
  • 刑事責任・民事責任の両方が発生

絶対に乗ってはいけません。


廃車の費用と時間


費用

  • 永久抹消:350円前後
  • 代行業者利用:1〜3万円
  • レッカー代:無料〜1万円(業者による)

車に価値がある場合は 買取価格のほうが多くなる こともあります。


期間

  • 必要書類が揃っていれば1日で可能
  • 戸籍収集に1〜2週間
  • 故人の戸籍が複雑な場合は1ヶ月かかることもある

廃車ではなく「売却」のほうが得になるケース

相続人の多くが誤解しているのは、
「動かない車=廃車」
ではないということです。

以下は買取になる可能性があります。

  • 外車
  • 新車に近い車
  • 事故車
  • 水没車
  • 古い軽自動車
  • バン・トラック

エンジンが壊れていても価値があります。


まとめ:故人の車の廃車は“相続手続き”である

最後に重要ポイントをまとめます。


故人の車は相続財産であり、勝手に廃車できない


廃車には相続手続き(戸籍・遺産分割協議)が必須


相続 → 廃車 を同時に行える


ナンバー、車検証、自賠責は必ず必要


自動車税・自賠責の還付がある


死後に勝手に車を使用すると重大な違法行為


価値があるなら売却したほうが得


故人の車の廃車手続きは、相続手続きと密接に関係しており、はじめての人には複雑に感じるかもしれません。しかし、必要書類と流れを理解し、相続人の合意と戸籍を揃えれば、1日で廃車手続きが完了します。

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