不動産売却時に必要な購入時の契約書

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相続した不動産を売却する際には、譲渡所得が発生し、これが課税対象となります。譲渡所得とは、不動産の売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益部分を指し、所得税および住民税が課される仕組みです。この計算を正確に行うために不可欠なのが、購入時の契約書です。購入時契約書は、取得費を証明する最も基本的な書類であり、その有無によって課税額が大きく変わることも珍しくありません。ここでは、譲渡所得の仕組みを確認しながら、購入時契約書の役割と重要性について詳しく説明します。


譲渡所得の基本的な仕組み

不動産売却時に発生する譲渡所得は、以下の算式で求められます。

譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除

譲渡価格とは売却代金のことを指し、譲渡費用とは仲介手数料や印紙税、測量費、建物解体費用など、売却に直接関連した費用を意味します。取得費は不動産を購入するために支払った費用であり、ここに購入時契約書の情報が必要となります。

取得費には土地や建物の購入代金だけでなく、登録免許税や司法書士報酬、不動産取得税などの付随費用も含まれます。さらに建物の場合は減価償却費を考慮するため、購入時契約書に記載された金額や条件が計算の起点となります。

契約書が取得費計算に果たす役割

購入時契約書には売買価格が明記されており、これが取得費の核となります。例えば、土地と建物を合わせて3,000万円で購入した場合、契約書には土地部分と建物部分の価格が分けて記載されていることが多く、その記載を基に税務計算が行われます。

建物の取得費は減価償却によって経年で価値が減少するとみなされるため、購入時契約書で示された建物価格が正確でなければ、譲渡所得の計算にも影響が出ます。特に長期所有した物件の場合、建物価格の取り扱いによって税負担が数十万円単位で変動することもあります。

契約書には売買価格だけでなく、手付金や中間金の支払い方法、引渡し条件なども記載されています。これらの情報は税務署が取引の実態を確認する際の判断材料となり、単なる参考資料ではなく、公式な根拠書類として位置付けられています。

契約書がない場合のリスク

もし購入時契約書を紛失してしまうと、取得費を正確に証明できない事態に陥ります。この場合、税務署は「概算取得費」という扱いを適用し、売却代金の5%を取得費とみなします。

例えば、5,000万円で購入した不動産を6,000万円で売却した場合、本来であれば取得費は5,000万円となり、譲渡所得はゼロに近くなるはずです。しかし契約書がなく概算取得費が適用されると、取得費は売却代金の5%、すなわち300万円しか認められません。この場合、譲渡所得は6,000万円-300万円=5,700万円と計算され、莫大な課税額が生じてしまいます。

このように契約書がないだけで実態とかけ離れた課税を受ける可能性があり、譲渡所得課税における購入時契約書の重要性が際立つのです。

建物の減価償却と契約書

譲渡所得の計算では、建物部分について減価償却費を差し引いて算出します。減価償却とは、建物の価値が時間の経過とともに減少するとみなし、その分を取得費から控除する仕組みです。

償却費の計算は「建物の取得価格 × 償却率 × 経過年数」によって行います。取得価格の根拠となるのが購入時契約書であり、これがなければ建物価格を正確に把握できません。建物と土地の価格が区分されていない場合は、契約書や固定資産税評価額を基に按分計算を行いますが、契約書があれば最も正確に算出できます。

例えば、契約書に建物価格1,200万円、土地価格1,800万円と記載されている場合、減価償却は1,200万円を基に行います。契約書がなければ、土地と建物の区分が曖昧になり、税務署とのやり取りが複雑化する可能性があります。

契約書と税務調査

不動産売却後の確定申告においては、譲渡所得を正確に申告することが求められます。税務署は必要に応じて契約書の提示を求め、売却価格と購入価格の妥当性を確認します。特に短期間での売却や高額取引の場合、取引の実態を裏付ける契約書が重要な証拠資料となります。

契約書に記載された購入価格や条件が明確であれば、税務署も納得しやすく、調査がスムーズに進みます。逆に契約書がない場合、領収書や振込明細などの補完資料で説明しなければならず、余計な手間や不安定な評価につながります。

契約書の保存と再入手

譲渡所得の観点からみても、購入時契約書はできる限り原本を保存しておくべき書類です。不動産は長期間保有されることが多く、数十年後に売却する際にも契約書が必要となるケースが一般的です。耐火金庫やファイルに保管するなど、紛失防止策を講じることが望まれます。

もし契約書を失った場合でも、当時の不動産会社に問い合わせれば控えが残っている場合があります。また、登記関連書類や司法書士の記録から情報を得ることも可能です。税務署に対して取得費を説明する際には、契約書が第一の資料であり、これを欠くと譲渡所得計算に大きな不利を招くことを忘れてはなりません。

以上のように、不動産売却時における購入時契約書は、譲渡所得を正確に算定するための根拠資料として極めて重要な役割を果たします。その有無は税額に直結し、場合によっては数百万円単位の差を生むこともあります。したがって、譲渡所得の申告を見据えるなら、購入時契約書を必ず確認・保管しておくことが不可欠です。

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